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酒井順子さんインタビュー

地元の人が見過ごしがちな日本海側の魅力。それを思い入れたっぷりにつづったのが、エッセイストの酒井順子さん(49)による「裏が、幸せ。」(小学館)だ。東京で生まれ育ち、今も東京に住む酒井さんが、なぜそれほどまでに日本海側に引かれるのだろう。日々暮らしている地域の良さはなかなか意識しにくい。日本海側の将来像を描く手がかりを得ようと酒井さんに聞いた。

酒井順子さん。「そこにしかないものがあるということ」が地域の魅力だという=東京都内

酒井順子さん。「そこにしかないものがあるということ」が地域の魅力だという=東京都内


―あらためて日本海側の印象を。

「人が多く、常ににぎやかな東京では、なかなか落ち着くことができません。しかし、日本海側を旅すると本当の静寂や闇があり、心からほっとできます。それが、いかにぜいたくなことか。私自身が大人になるにつれて、日本海側の豊かさに気づくようになりました」

「ずっと日本が成長し続けていくと思われていた時代と違い、今はあらゆる地が東京のようになればいいと思う人は少なくなっている気がします。日本海側は低成長時代に、かえって最先端になってきているのではないでしょうか」

―「最先端」とは?

「静かで地味な『裏』ということ自体が魅力になるのが今の時代。昔は遅れたアジアを欧米のようにしなければと考えられていたけれど、今はアジア独自の魅力をアピールしようと変わってきました。日本海側もどんな特性を持つのかを見つめれば、娯楽がたくさんある形とは違う観光開発もできるのではないでしょうか。費用が高すぎず、居心地が良くて静かに本が読める宿とか」

―現在、日本海側は人口減少が進んでいます。地域の魅力を高め、移住者や定住者を増やすためには何が必要でしょうか。

「旅をしていると、地元の方々とのずれを感じることがあります。例えば、地元の野菜が食べたいと思っていても、『そんな、ただみたいなものは』と食べる機会がなかったり。魅力は案外、足元にあるのではないですか。地元の人にとっては当たり前すぎたり、やっかいな存在だったりする物も、外の人にとっては魅力になるのだと思います」

「交通や通信のネットワークが発展した時代ですから、自分の地元以外の地域で親しみのある場所を持つ人は増えています。ただ、いきなり移住というのはハードルがかなり高い。旅先としてとか、セカンドハウスを持つとか、最も親しみのある場所として日本海側が選択肢に入るようになるといいですね」

―日本海側の旅の楽しみとは何でしょう。それを深く味わうためのアドバイスもお願いします。

「独りでいることの大切さを感じ、静けさを味わえることでしょうか。なるべく小人数で旅をするのがいいと思います。喧噪から離れ、黙って風景を眺めることができるぜいたくさが、そこにはあります」

―「日本海スタイル」事業には7県が参加します。それぞれの県を旅する中で思い出に残ったことを教えてください。

「青森は、秋田と結ぶJR五能線の車窓から見た雪景色。弘前は文化が豊かな場所。秋田は後生掛温泉。顔を隠して踊る西馬音内盆踊りも好きです。新潟では最近佐渡によく行きます。そばまつりのファン。新潟本土だと栃尾の油揚げ。新潟は食べ物がおいしく、豊かで楽しい所です」

「福井は冬の水ようかんや三方五湖。手つかずの自然が残っていますね。兵庫県の但馬地方といえば、但馬牛がおいしかった。この辺からリアスっぽい日本海側の景色が見え、JR山陰本線がおもしろくなる。鳥取駅の周辺は温泉があり、手作り万年筆とか楽しい店が点在しています。島根は出西窯といういい窯があるし、やはり神社。鳥取も島根も海沿いと山沿いの表情の違いが魅力です」

※このインタビューは、各紙の日本海スタイル特集内記事を掲載しております。


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