津軽塗(青森県)
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ブナコ・スピーカー(青森県)
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二唐刃物鍛造所(青森県)
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津軽塗眼鏡(青森県)
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持ち運び手洗い器開発 衛生確保へ産学連携

モバイルシンクを共同開発した八工大の浅川講師(左)とザックスの田高所長

八戸工業大学工学部の浅川拓克講師(自動車工学)と東通村の理化学資材の商社「ザックス」が共同で開発に取り組んでいる物がある。それは、持ち運び可能な手洗い器「モバイルシンク」だ。八戸市民病院で活用している「ドクターカーV3」に搭載し、現地で手術など高度な救命医療を行う際に衛生環境を確保するために設計した。
浅川講師によると、モバイルシンクは、少ない水で効率よく汚れを落とし、滅菌できることが特徴だ。手洗いは通常1リットル以上の水を使うが、モバイルシンクは100ミリリットル以下。強酸性の電解水を用い、足踏み式のポンプで圧力を掛けて水を噴射させる。蛇口の開閉スイッチを足元に配置し、手洗い後は蛇口に触れなくても水を止められる。災害時や避難所でも動かせるよう、電力は一切使わない。

モバイルシンクの試作品。足元のスイッチを踏むと、電解水が噴出する

浅川講師が2014年に八戸市民病院と共同開発したV3は、現地に手術室を設けることができる。救急時は感染症対策よりも救命が最優先となり、手の清潔はこれまで手袋だけで対応していた。一方、浅川講師にはV3で行う高度な救命医療に合わせて衛生環境を向上させる構想が以前からあり、16年春、現場で手を洗える機材の開発に着手した。
V3の開発に加わっていたザックスは、シンクを作るための資材集めを担当した。シンクは災害時に壊れてもすぐに直せるよう、核となる部品以外はホームセンターなどで購入できる汎用(はんよう)品を活用した。

蛇口や開閉スイッチなどは多くの部品を試しては取り換えるという試行錯誤の連続だった。ザックス八戸営業所の田高(たこう)昭人所長は「買ってきた部品が全部没になったこともあった」と振り返って笑う。最終的には、農薬散布器の構造がヒントになったという。
シンクのボディーや水を受ける器部分などの素材には、八戸市で製造が盛んで、船体などに使われる繊維強化プラスチック(FRP)を選んだ。同市の高いFRP加工技術を用いて地元の産業を盛り上げたい-という共通の思いがあった。ザックスは日頃培ったネットワークを生かし、同市の八戸マリン商会を浅川講師に紹介。製造を同商会に委託し、試作を重ねた。
2月中旬からは市内の高齢者福祉施設2カ所で実証実験を行う。集団で生活している高齢者たちの衛生環境の向上に役立てるほか、非常時に備えて日頃から使い慣れてもらう狙いもある。1カ月間貸し出し、使用感などをアンケートで聞き取るという。
浅川講師は「避難所や高齢者福祉施設など集団生活の場でまん延する恐れのある感染症の予防と、救急医療現場のどちらのニーズにも対応できる。特に災害時の避難所は衛生環境が1週間ほどでひどい状態になるので、シンクを有効活用できればいい」と話す。
シンクの共同開発は、医療・健康福祉分野での産業振興を目指す県の「青森ライフイノベーション戦略セカンドステージ」に基づき、新たなヘルスケアサービスビジネスの創出に取り組む実証事業として県から委託を受けている。予算として約150万円を交付された。特許も出願中だ。
田高所長は「ザックスは、お客さんのやりたいことをコーディネートし、事業を展開させていく取り組みをしている。今回は地元の加工場と組むことで、より良い物ができると思った。青森の中で作れるものは青森でやりたい。地元の産業を盛り上げていきたい」と語った。
(2018年2月3日付朝刊 東奥日報掲載)

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