津軽塗(青森県)
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ブナコ・スピーカー(青森県)
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二唐刃物鍛造所(青森県)
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津軽塗眼鏡(青森県)
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客の声ヒント 失敗重ね「サバトバ」実現へ/産学連携で乾燥技術開発

ゼロから会社を立ち上げたマルカネ代表の秋山さん(左)と工場責任者の大濱さん=八戸市新湊1丁目

2011年3月の発生から間もなく7年を迎える東日本大震災。被災地では多くの人が人生の岐路に立たされた。
青森県八戸市の秋山兼男さん(59)もその一人。同市の水産加工会社の営業担当として東京営業所で勤務していた時、震災に遭遇した。本社工場が被災し、東京営業所は閉鎖。秋山さんは解雇された。

「八戸のサバがどうしても欲しい」。一歩を踏み出すきっかけは、関西の取引先からの連絡だった。秋山さんは地元八戸市で加工会社を設立することを決意。同年7月、元同僚の大濱利得さん(58)らと手作業にこだわった締めさばなどを製造販売する「マルカネ」を設立し、代表に就任した。

市内の水産加工場の一角を借り「まな板と包丁1本」(大濱さん)で事業を始めた。再開した同市館鼻岸壁の日曜朝市に出店し、サバの唐揚げやサバずしを売った。八戸の復興に協力したいとの思いと同時に、現金を得たいとの切迫感もあった。

大濱さんが持つ加工技術と秋山さんの営業経験を生かし販路を拡大する一方、市外のイベントにも積極的に出店した。そんな時、JR東日本の企画が舞い込んだ。八戸工業高校との共同開発により、首都圏で新商品を販売する内容だった。

生徒のアイデアは、ニンニクみそにサバのほぐし身を入れる斬新な調味料。14年に「サバーリック味噌(みそ)」として売り出すと、テレビの人気番組で紹介されたこともあり、全国から注文が寄せられた。

八戸港に水揚げされるサバは小型傾向が続くが「青森の食材を組み合わせて商品を作ると『健康に良さそう』などと付加価値を生み出せることに気づいた」と秋山さん。これを機にニンニクなど農産物の生産者との付き合いを始めた。南部町名産のアンズを使った「サバァンズ味噌」など、農家との連携でシリーズ商品が生まれた。

秋山さんの大きな目標は、缶詰やレトルトではない、常温保存できるサバ加工品を実現することだ。朝市やイベント会場で、客から「持ち帰りやすいサバの土産が欲しい」と何度も言われたことが発端だった。

乾物の商品化を目指し、北海道の鮭トバの加工場に「サバトバ」の試作を依頼した。だが、サケに比べてサバの脂は劣化が早く、失敗が続いた。

諦めかけていた約2年前、岩手大学と真空装置製造のアルバック(神奈川県)による説明会が八戸市であった。新たな食品乾燥技術と装置が紹介され、参加した秋山さんは「アルバックという会社を知らなかったが、話を聞いて直感的に『いける』と思い、手を挙げた」と語る。

子会社のアルバック東北(八戸市)や八戸工業大学と共同で装置や商品の開発を進め、サバトバの試作品が完成。仙台や東京の食品展示会に出展すると、バイヤーは高い関心を示した。2月中にも自社工場内に製造施設が設置され、春から本格生産を始める予定だ。「農産物の乾燥品にも応用できる技術。地域の農水産物の付加価値を高めたい」と秋山さんは夢を膨らます。

手前が産学連携で実現した「サバトバ」の試作品。奥はサバのほぐし身入りの調味料

小さな会社は自力での商品開発には限界があり、産学連携の技術に出合って道が開けた-と秋山さんは実感する。「原点は朝市。お客さんの声を拾っていく中でアイデアが生まれ、一つずつ形になり、新たな仕事も来るようになった」と振り返る。

サバトバの取り組みは本年度、県が産学官金連携の優良事例を表彰する「イノベーションアワード」の特別賞を受賞した。県新産業創造課の下井田幸喜課長は「一つの動きがきっかけとなってネットワークができ、助言や情報提供を受けながら次の戦略を練り、会社を大きくしていく。マルカネは産学官連携の好事例だ」と評価している。

(2018年2月4日付朝刊 東奥日報掲載)


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