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器や古美術品の修復師 河井菜摘さん(倉吉市) 変幻自在な漆の魅力に引かれる

壊れた陶器に、漆で「金継ぎ」を施す河井菜摘さん=倉吉市関金町米富

倉吉市関金町米富の河井菜摘さん(34)の元には、割れたり、欠けたりした日常使いの陶磁器や古美術品などが、山陰両県をはじめ、全国から集まる。河井さんはこれらを修復する専門家だ。伝統的な技法を用いて、時には直した箇所が分からないほどなじむよう仕上げ、時には割れた跡を新たな「美」として生み出している。

物作りの世界に飛び込んだのは大学時代。出身の大阪から京都市立芸術大学に進学し、「材料も作り方も一番未知の世界だった」という漆工を専攻した。大学院に進み、作家を目指しながら美術作品を作る中で、違和感を抱く瞬間があった。「自分の創作意欲は満たされるけど、副産物として大量のごみが出てしまっている」

そんなときに出合ったのが「修復」の仕事だった。創作活動の傍ら、縁あって勤めるようになった京都の茶道具卸会社で、破損した茶道具を直す修復スタッフになり、再び漆と関わることになる。修復で使われる漆は、色が剝げた漆器の塗り直しや、割れた茶わんの接着剤として用いる。変幻自在な漆の魅力に改めて引かれ、「再び価値を生み出す修復の仕事」の道に進むことを決意した。

より専門的な知識を得ようと27歳から2年間、漆と蒔絵(まきえ)の専門学校に通った。京都で独立し、修復の依頼も少しずつ増えてきた頃、大山の麓にある築50年ほどの一軒家が売りに出されていることを知った。もともと移住するつもりはなく「作品の置き場に使えるかな」と訪れると、豊かな自然に囲まれた環境が気に入り、2015年3月に移住した。

河井さんが用いる修復法は3種類。欠けや割れを漆で接着し、継ぎ目に金粉をまく「金継ぎ」、漆の塗り直しなどを施す「漆修理」、破損箇所を周りの質感に似せて仕上げる「共直し」だ。いずれにするかは依頼主と相談して決める。

金継ぎは茶の湯の文化とともに発展した技法といわれる。接着に使うのは生漆や、餅粉、木粉といった自然素材で、最後の装飾として金粉をまく。継ぎ目を新たな「景色」として見立てる、古くからたしなまれている修復法だ。

修復の仕事について「世の中にある、直したら使えるものを直す、お医者さんのような存在」と河井さん。依頼品の修復が無事に終わっても気は抜けないといい、「依頼主に届け、ほころぶ表情や喜ぶ声を聞いてようやくほっとできる」と笑みをこぼす。

自宅で開く金継ぎ教室の準備をする

倉吉を拠点に京都や東京にも定期的に出向き、一般向けに金継ぎや漆塗りを教える教室を開いている。「技術を伝えることと同じように、物は直せるという心持ちも伝えていきたい」と思いを語る。

「漆についてまだまだ知らないことがたくさんある。私にとってずっと楽しめる素材です」

(2018年4月26日付 山陰中央新報掲載)

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